奈良
35℃を超える真夏の一日、奈良に行って来た。
奈良国立博物館で興味深い企画展が開催されていて、
熱中症やCOVIDの恐れも感じながら2年振りの奈良行きだった。
25年程前は毎年のように奈良を訪れていた。
佛教美術の講座を受講していた為、主に秋の「正倉院展」が目的だったが、
いつも娘同伴だった。
そこで東大寺の鹿のファンになった娘は、
5年生の夏休みに自由研究として「奈良の鹿」を題材に選んだ。
当然現地に行かなきゃ?という大義名分で(笑)真夏の奈良を訪れた。
奈良も盆地の為、夏の暑さはかなり厳しい。
酷暑の中で鹿の写真を大量に撮り、鹿保存会でエピソードを取材し、
駅近くの商店街で名物の「大仏焼き」を食べた。
炎天下での取材後にジョッキ!で飲んだウーロン茶は、今も娘との語り草だ。
鹿の自由研究から数年後には娘と共にラクリマにのめり込み、
東京・大阪へのライブ遠征に明け暮れる様になってしまったので、
奈良とは随分ご無沙汰になった。
「正倉院展」を観るため再び奈良を訪れたのは2年前の秋、実に22年振りだった。
その時、近鉄奈良駅を出た最初の印象は「さほど変わっていない!」だった。
駅前の広場も、そこに立つ黒衣の僧も、商店街の雰囲気も。
4半世紀近い前とほぼ変わっていない事に驚いた。
そして今回もその思いを更に強くした。
奈良博ではすべての展示品を撮影可能で、
仏像でも装飾文様ばかり 拘りの細部を撮影して滞在時間を長くしてしまった。
もっとも今は一人だから、「早く帰ろう」と急かす娘もいない。
気兼ねも無いけれど、少し寂しい。
奈良博を出た後は炎天下の昼下がり、
興福寺を抜け猿沢の池近くのお好み焼き屋さんまで歩く。
人影もまばらで、ほとんど風も吹かないお寺の土塀脇で救急車とすれ違うと
思わず「ここで倒れて搬送されない様にしっかり歩かなきゃ」と思ってしまう。
五重塔近くのひなびた石段に座って休んでいると、
時間が止まっているようだ。
よくある例えではなく、本当に「止まっている・・」
そんな感じだった。
考えてみれば、奈良は京都が平安京と呼ばれるより数百年前、
8世紀には既に日本の都だった。
2021年の現在まで1,300年以上も町として存在している。
普通の街なら、たとえ50年でも周りの変化は大きいと感じるけれど、
奈良ではさほどの問題ではないのかも知れない。
時の流れるスピードが違う。ゆっくり時が流れている。
その奈良の町では、ひとりの人間の7・80年の人生なんて微々たる時間なんだろうな。
時の流れがゆっくりなのを証明するように、
四半世紀振りに訪れた「かめや」は今もちゃんと営業していて、
大仏焼きもジョッキウーロン茶も健在だった。
正直もうお店自体も有るのか不安だったけれど、
そんな心配を笑うように、な〜〜んにも変わらずそこにあった。
やっぱり奈良は時がゆっくり流れている。
往復の近鉄特急の車窓から見えるのは、
のどかな田園風景と真っ青な空にモクモク湧いてくる入道雲だった。
おそらくこの夏に見る一番の夏空。
この風景も奈良の街の雰囲気も変わらず在り続けて欲しいと思う。